#04 考えさせられる本
「BUTTER」柚木 麻子
男たちから金を奪い、殺害容疑で逮捕された女性と、彼女を取材していくうちに翻弄されていく記者の物語。
読者である私も読んでいくうちに容疑者に翻弄されていってしまいました。なんだか、魅力的に見えてくるんです。
容疑者の女性は若くもないし美人でもない。なのになぜ男たちは彼女に惹かれ、殺されたのか?小説としては長めですが、どんどん彼女の不思議な魅力と事件の真相が気になって、夢中で読み進めてしまいます。
作中に何度も出てくるバターの描写もすごい。よだれが出てきそうなほど美味しそうなんです。この小説はいろんな意味で危険です(笑)
「コンビニ人間」村田 沙耶香
芥川龍之介賞受賞作として話題になりましたね。主人公は「普通」にふるまうことができません。些細な行動も、人間関係も普通にできなくて、周りから「変わってる」と言われます。でも何が「普通」で何が「変わってる」なのかずっとわからない。だからコンビニ店員のような、決まったマニュアル通りに働く環境がとてもありがたいのです。正直この小説、ずっと変です。自分と価値観が違いすぎてまったく理解できません。自分とはずれた価値観で話が進むから、違和感がつねにあります。その気持ち悪さがおもしろくて、最後まで読んでしまいました。
そんななかにも共感できるカケラがたまに落ちていて、それを見つけたとき少しうれしい。私が特に印象に残ったのはこの主人公が発した台詞。
「え、自分の人生に干渉してくる人たちを嫌っているのに、わざわざ、その人たちに文句を言われないために生き方を選択するのですか?」
この作品は真っ向から常識を否定してきたり何かを訴えたりしてくるわけではないのですが、「主人公の考え方や人生が変だと思う自分こそが変なのでは?」と思ってしまうほどメッセージ性が強い。
普通って何なのかわからなくなってきます(笑)ちなみに同作者の「地球人間」も読んでみたのですが、もっとヤバかったです。
「何者」朝井 リョウ
就活を通して見えてくる人間の見栄や欲。就活をしたことがある私としてはすごくリアルで面白かった。
朝井リョウさんはみんなが普段隠している感情の深い部分を描くのが上手ですよね。
登場人物全員が一生懸命なのに悪く見えてしまう。でも共感もできてしまう。
日本の就活の在り方はおかしいと言われるけれど、そのなかで必死に生きている学生たちの姿は他人事ではないはずです。